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アメリカ大陸、中米のユカタン半島の一部にベリーズ(Belize)という小国があります。遺跡もありますが何と言っても手つかずの自然のままの美しい海が観光客を魅了しています。そこはカリブ海ですが美しいサンゴ礁が広がり、ダイバーには世界的に有名なブルーホールもあり、自然の姿を残している島々はリゾート地としてたくさんの観光客が訪れます。
20年くらい前、私はメキシコのカンクンから5人乗りくらいの小さなセスナ機?でベリーズに入りました。翌日にはボートで長さ1kmしかないキー・カーカー(Caye Cualker)という小さな島へ渡りました。そこは数件のホテルはあるものの自動車もない、自然を楽しむ、そしてシュノーケリング等のマリンアクティブを楽しむ場所です。
私が島を散策している途中で現地の男の人と立ち話をしていたらその人が明日ツアーに来ないかと誘ってきました。彼、リカルドは一人でツアー会社をやっていてツアーではガイドもしているとのことでした。シュノーケリングもできて海の生き物にもたくさん会えるしサメとも遊べる?と言っていましたが、料金は半日ツアーで約1,000円とのこと。
その料金なら安いし、たとえ大した内容でなくてもシュノーケリングもできるならいいかと思い、道端で会ったご縁もあるので参加することにしました。実は半信半疑のままでしたが、ちゃんとそのツアーは遂行されリカルドが操縦するボートでシュノーケリングスポットなどへと向かいました。ホール・チェン海洋保護区、コーラル・ガーデン他へと行きましたが海の綺麗さは間違いなくサンゴ礁も魚たちも、もちろん透明度も素晴らしかったです。
そしてサンド・バーという所へ言った時のことです。そこは海の真ん中ですが着いたエリアには既にたくさんのボートがいて後からも続々とボートが集まって来て人々はそれぞれボートの周りの海へと入っていました。ところが海を見るとものすごくたくさんのサメやエイが泳いでいました。ザッと見ても数百匹以上はいたと思います。サメ達は私達がエリアに近付くとボートを囲むようにして一緒に泳いでくれました。ボートを停めるとリカルドが「さあ、みんな海へ入って!」。私はびっくりして怖気づきましたが皆どんどんとサメがうようよ泳いでいる中へと入っていったので意を決して私もついに!
そのサンド・バーはサメ(ナース・シャーク)とエイ(スティング・レイ)(どちらも1.5mはあったような記憶が)の溜まり場で、観光客は触れ合うことを楽しむという、他にはない貴重な体験ができます。各ボートにはガイドと観光客がいて皆海へ入り自分たちのボートの周りで自分のガイドの説明を聞きながらサメ達を鑑賞します。ボート・ガイド・観光客がワンセットのような感じで。
そしてリカルドが海へ入った途端サメとエイが彼に近付きたくて彼目がけて重なり合ってバシャバシャと上を下への大騒ぎを始めたのです。目の前の光景が信じられなかったです。サメ達はリカルドに飛びついたり鼻で体をツンツンしたり猫のようにすり寄ったりして愛情表現していました。彼らを一匹ずつ抱きかかえてリカルドは私たちにサメやエイの説明をしてくれました。又はサメを反転させて仰向けにしてお腹をさすり、私達にもさすってごらんと触らせてくれたり、エイの尻尾を掴んだり大きなヒレを引っ張ったり、それでも彼らはリカルドのされるままになって大人しくしていました。むしろ嬉しそうに見えました。飼い慣らしている訳ではなく自然のものなのに。サメとエイで混雑しているので私の足の間やわきの下を彼らは泳いだりしました。サメと遊べるとはこのことだったのか。私は夢中でリカルドに色々質問したり抱っこをトライしたりしました。
世界にはこんなことがあるのだなぁと私は興奮しながらその時間を楽しみました。
帰る時もサメやエイはやはり私たちのボートを追いかけて見送ってくれました。
カリブ海ってなんて美しい、魅力的、神秘的、素晴らしい!考えてみれば、何ヶ所かのスポットに寄ってシュノーケリングをして、サンゴ礁、沈船、ブルーホールを楽しみ、サメやエイと触れ合って、それでこの半日ツアー1,000円?
私はツアー後にまた申し込むとリカルドに言ったら今日から1週間休むと言われたので、他のツアー会社を探して同じ内容の半日ツアーに参加しました。あんなに楽しい体験をもう一度したいに決まっています。ところが同じようにサンド・バーに行きましたがサメやエイはただそのエリアを泳いでいるだけで私たちの周りも他のボートの周りもスカスカ。全く寄って来てくれませんでした。ガイドがサメやエイを触ろうと手を出してもスルリと逃げて行くのです。他の観光客はこれが初体験なのでたくさんのサメ達がいる状況に興奮して声を上げて騒ぎ喜んでいました。でも私は前回とのあまりの違いにびっくりしました。360°見渡しても興奮して跳ねているサメも、バシャバシャ騒いでいる箇所もなかったです。サメ達によるボートのお出迎えもお見送りもなかったです。ウロウロしている彼らは、私の目にはリカルドを探しているように見えました。
ということは、全ては“リカルド”なんだ。リカルドと一緒だったからあんなにもサメやエイが寄ってきて超楽しかったんだ。あんな体験有り得ない。海の真ん中でそれに気付いた私は衝撃を受け愕然とし、体中にギュウっと力が入ったような感覚になりました。
その後キー・カーカー滞在中リカルドを探しましたが島から出て遊びに行っているらしく彼のオフィスも閉まっていて会えませんでした。もう一度会って心からのお礼と称賛の言葉を直接言いたかったです。私がこの島に来て、たまたま道端で会い、立ち話をして、ツアーに誘ってくれたリカルド。あの時はその後の展開を知る由もなかった私ですが警戒して断ったり他のツアー会社に申し込んだりしなくて良かったです。
奇跡のリカルド。そのリカルドと会えた奇跡。
サメやエイを抱っこできた、撫でられた、喜んでジャンプして抱きつく姿を見られた。
小さな国の小さな島の出来事ですが、リカルド、こんなに大きな思い出をありがとう。