2018.6.21

おもてなし精神にジーン(シリア)

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現在は訪れることができない国、シリア。私が旅行した20年近く前はとても明るくて活気があり、フレンドリーで街もとてもきれい、出逢った人達は皆私に親切にしてくれました。他の国でも同じですが、何度も同じ道を通るのであちこちから「エリ、おはよう」とか、「エリ、どこ行くの」とかたくさんの声がかかります。

シリアでの思い出もたくさんありますが、ここではあるカフェテリアについてのお話を綴ります。

 

シリアの首都ダマスカスの中心にあるホテルの中に食事もできるカフェテリアがありました。とても清潔できれいでしたがお客さんはいなかったです。私は前日そこに行きチャイ(10円)を頼みました。するとちょうど飲み終わったころ頼んでいないのにもう一杯チャイを持って来たのです。とても美味しいチャイだったけれど、もしかしてこうして勝手におかわりさせて旅行客から倍の料金を取っているのかなと勘ぐっていました。でも実際はお会計で1杯分の料金(10円)しか請求されませんでした。帰る時には従業員皆がまた来てねと言ってニコニコしてくれました。

 

前日の時点で従業員とは皆顔見知りになって感じ良かったし、とても清潔で美味しかったので私は翌日も食後のチャイを飲みに行くことにしました。外で夕食を取り満腹のままそのカフェテリアに行くとその日は少しテーブルのレイアウトが違っていて私は奥のパーテーションの向こう側の席に通されました。お店の全部が見えなくて私のテーブルだけがそこにある感じでしたし、どちらかと言うと裏方のエリアのようでしたが気にせずチャイをオーダーしました。やっぱり美味しい。そのうち急にガヤガヤしてたくさんのお客さんが入って来た模様でした。今日は混んでいるみたいと感じました。

 

本を読んでいると突然目の前にお皿が出てきました。そこには大きなナツメヤシの実(甘い)が4つありました。ビックリして振り返るとカフェの従業員7~8人皆が食べて食べてという感じで笑顔で私を見ていました。私は夕食後でお腹いっぱいでしたが好意を受け入れようと思いなんとか2つ食べました。また少しすると今度はバナナが1本お皿に乗ってやって来ました。ウエイターを見ると「いいから、いいから」と満面の笑みで去っていく。振り向くとまた全員が私を見て笑顔で手を振っていました。本当に頑張ってバナナも食べました。もう何も来ませんようにと願っていたのに、次はなんとものすごい具だくさんのスープが運ばれてきたのです。「え、なんで⁉」皆を見ると「いいから食べて食べて」と本当に嬉しそうに手真似で示しています。もうお腹が苦しかったけれど食べてみたらとっても美味しかったので殆ど全部食べてしまいました。その次はパンと新しいチャイがやって来ました。もちろん私は毎回「美味しい、美味しい」と感嘆し、「ありがとう」と感謝しました。

でもお腹がパンパンだった私はこれ以上座っていたら次はどんな料理が運ばれて来るかわからないと思い慌てて立ち上がりました。お会計も少し怖かったし。

 

しかし、元々私がオーダーしたチャイ1杯分の10円しか請求されませんでした。私が少し多く渡そうとしても絶対に受け取らないのです。なのでカバンの中を探してたまたまあった飴玉を2つ手渡して「ありがとう」とお礼を言いました。そのウエイターも私に「ありがとう」と言ってくれた上に、ニコニコしながら「明日も来てね!」と言ってくれました。

 

会計してお店の中を通って帰る時、私は「一瞬で色々なことに気付き」ました。このカフェテリアのお客の中では私以外の全員が1つのグループで25人以上はいました。予約していたようです。先程騒がしかったのは予約客の到着だったのです。そのグループと区別するために私はパーテーション裏の席だったのか、いや、その日は実は店を貸し切りにしていたから団体客から私を隠すためだったと思われます。前日仲良くなった従業員たちは私に入店を断るどころかそうまでして私を歓迎してくれたのです。

 

そしてその団体客のテーブルにあったのが、あら、私と同じ、ナツメヤシ、バナナ、具だくさんのスープ、パン。そしてまさに今メイン料理が一斉に運ばれているところでした。団体客にコース料理のお皿が運ばれるたびに、なぜか私にも同じお皿が運ばれて来ていたことに私はやっと気付いたわけです。あのまま席にいたらこのメイン料理も、デザートも全部私にも運ばれてきたのですね。驚き、納得、仰天、色々な感情がありますが何よりもお皿を持って行く度に驚き、喜ぶ私を見て従業員の皆が顔を見合わせながらもっと私を喜ばせようとニコニコ嬉しそうにしていたことに、遅ればせながら胸がジーンと熱くなりました。

ただ、夕食を2回食べたのと同じです。お腹が苦しくてカフェテリアを出てすぐにウエストのボタンを一つはずしました。もっとお腹を空かせて行って毎回運ばれて来るお皿に心から感嘆し、美味しそうに全部食べる姿を見せたかったな。そうすることで私も従業員の皆をもっと喜ばせたかった。コース料理の途中で席を立ってしまって申し訳なかったな。途中で帰ってごめんなさい。

本当に心から嬉しかったけれどちょっぴり困った、でもやっぱりう~んと温かい気持ちなった、シリアでの1つの素敵な思い出です。おもてなし精神にジーン。

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